正確な芯出しを行うために「熱膨張」を攻略しましょう!

すべての回転機械は熱の影響を受けます。機械の各部品は温度と材料に応じて、膨張または収縮といった異なる反応をします。特に、熱膨張は想像以上に深刻な問題です。具体的にどのような問題が起きるのでしょうか?

駆動機械と被駆動機械

すべての回転機械は連結して設置されています。連結とは、ポンプ、ブロワ、コンプレッサーといった被駆動側であるプロセスマシンと、それを動かすモーターといった駆動機械が存在することを意味します。回転機械設置の際、精密な軸芯出し(シャフトアライメント)が行われます。軸芯出しを行うことで、(駆動側と被駆動側)両方のシャフトが同一直線上にあることが保証されます。同一線上とは、両方の回転中心線が1つであるように配置されている状態です。

機械稼働後、駆動機械と被駆動機械はそれぞれ異なる熱膨張特性を示します。被駆動機械の例として、高温環境のコンプレッサーがあります。内部の回転部品の摩擦により温度が急速に上昇するだけでなく、流体の圧縮により、さらに熱が発生します。一方で、電気駆動であることが多い駆動機械の状況は非常に異なります。温度はある水準まで上昇した後は一定の水準で推移します。このように機械によって熱膨張特性は異なるのです。では、一方の温度が他方に比べて高くなるとどうなるでしょうか?

熱膨張によって何が起きる?

温度が上がると機械はあらゆる方向に膨張し始めます。すると、軸は回転中心からずれてしまい、ミスアライメントを引き起こします。ミスアライメントだけではありません。機械の形状が変化するため、配管のひずみが発生し、ハウジングにさらに応力が発生する可能性があります。

最初から熱膨張を考慮に入れた軸芯出しを

回転機器の熱膨張は非常に多くの影響を及ぼします。例えば、ミスアライメントが起こると、回転軸が歪曲します。軸が曲がると、ベアリングへの荷重が不適切に分散され、潤滑不良に陥ります。そのような事態を回避するため、OEMから入手可能な情報を使用するか、自分で計算を実行し、熱膨張を予測する必要があります。具体的にどうすればよいのでしょうか。

重要なのは、どの程度の膨張が予想できるかを特定し、稼働前に機械を「意図的にミスアライメント」するように軸芯出しを行うことです。もう一度例としてコンプレッサーを考えてみましょう。コンプレッサーがモーターよりも高い温度で稼働すると仮定した場合、芯出しをするときに、コンプレッサーをモーターの回転中心線より下に配置する必要があります。材料ごとに定められた下表の熱膨張係数によって、どれだけ下げるかが決まります。

想定される熱膨張に合わせて機械の芯出しを行った後、標準運転条件に達するまで機械を稼働させます。その後、一旦機械を停止し、シャフトアライメントを確認します。試運転後も、適切で信頼性の高い調整ができていれば、想定寿命を達成できる可能性が高くなります。生産に入る前の試運転は、熱膨張の計算が正しいことを確認する目的で実施されます。

翻訳・編集/いしだ

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※本サイトは鉄原実業株式会社が運営しております。


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