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クロスヘッド振動の36セグメント解析による機器シャットダウン事例

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往復動圧縮機はさまざまな機械要素で構成され稼働しています。その中でも重要な駆動部のクロスヘッドで不良が発生すると、機器全体の致命的損傷につながることもあり、早期の不良検知が望ましいとされています。

従来、クロスヘッドの振動解析には速度センサが用いられてきましたが、30年以上にわたり往復動圧縮機の状態監視分野のリーディングカンパニーとして、「PROGNOST(プログノスト)®システム」の開発、提供を行ってきたPROGNOSTシステムズ社では加速度センサを活用し、不良を検知しています。本日はその手法と、実際に起こったクロスヘッド不良検知によるシャットダウン事例をご紹介します。
 

h2midashi クロスヘッド振動の36セグメント別解析

プログノストによるオンライン状態監視 コンディションモニタリング 往復動圧縮機 予知保全 IoT ビッグデータ

オンライン状態監視システム「PROGNOST®」の特徴の一つに、1回転の振動を36セグメントに分けた振動パラメータ値による監視があります。PROGNOSTシステムズ社では、クランクシャフト1回転=360度を、10度ずつ、36のセグメントに分割し、全36セグメントのパラメータ値に、それぞれ固有のしきい値(安全境界値/警告値)を設けることで、不良の早期検知、警告や警報発報、インターロック(緊急停止による機器保護)を行うことができるシステムを構築しています。主にクロスヘッド振動とシリンダ振動で、この解析手法が用いられます。
 

h2midashi ケーススタディ

計測対象設備は4列複動シリンダの水平対向型、2005年に製造された天然ガスサービス向けの往復動圧縮機で、吸入圧力/吐出圧力はそれぞれ3 Mpa/8 Mpaでした。それぞれのクロスヘッド部とシリンダ部に振動加速度センサ、動的ロッド変位計測用にロッドポジションセンサ(近接センサ)が設置されていました。

プログノストによるオンライン状態監視 コンディションモニタリング 往復動圧縮機 予知保全 IoT ビッグデータ

早速、クロスヘッド部に取り付けた振動加速度センサが取得したオンライン信号を、各セグメント(クランク角度10°ごと)のRMS値にしたグラフを見てみましょう。下部の緑色のグラフがセグメントごとのRMS値を示しており、左右どちらも良好状態に取得した同じオンライン信号をもとにしたデータです。

プログノストによるオンライン状態監視 コンディションモニタリング 往復動圧縮機 予知保全 IoT ビッグデータ

機械要素の挙動によって、特定のクランク角度で突発型の振動波形が現れます。わかりやすい例でいえば、シリンダ部では吸入弁や吐出弁の開閉時、突発型の振動が見られますが、そのタイミングで発生する振動は異常ではありません。右側のグラフはピンク色の安全境界値の設定に特徴がありますね。このように他のクランク角度の安全境界値と設定を変えることで、「機械要素の挙動によって必ず発生する振動」と「異常兆候として捉えるべき振動」をより正確に把握することができるようになっています。

ただし、このようなセグメントごとの安全境界値を設定するためのポイントがあります。それが機器固有の振動傾向です。

こちらの事例ですと、セグメント#10-#15は、正常時でも少し高めです。このように、正常運転時の振動レベルは、各セグメントにより異なり、低いものもあれば、高いものもあります。PROGNOSTシステムズ社では、この正常時の振動を約6か月間にわたり取得し、その振動をベースに境界値を設定します。この方が、機器固有の振動傾向に即した不良判定ができますし、デフォルトよりも境界値の全体レベルを下げられるので、不良の早期検知につなげることができます。

セグメントごとの安全境界値を設定するまでの数か月の間、シャットダウンや警報などの機器保護を行う基準がない状態とならないよう、「セグメント化されていない、一定レベルの安全境界値」をデフォルトで設定します。このデフォルト値は、機器の致命的損傷を回避するために、PROGNOSTシステムズ社が過去実績から決めた値で、早期検知というよりは、最悪の状態を避ける、安全策としての境界値となっています。
 

h2midashi シャットダウンまでの経緯と解析データ

2010年1月17日、PROGNOSTシステムズ社のカスタマーサポートにシステムユーザーから電話が入りました。シリンダ#2のクロスヘッドのRMS振動の36セグメント解析により、機器トリップが発生したので、関連データの解析をしてほしいという依頼でした。オペレーターはシャットダウン後、すぐに機器の外観をチェックしたものの、特に変化は見られなかったため、カスタマーサポート担当者によるデータ解析を希望しました。

はじめに、シリンダ#2のクロスヘッドのRMS振動の36セグメント解析の結果を見てみましょう。セグメント#4-#9までの振動がかなり大きくなっており、「セグメント化されていない、一定レベルの安全境界値」を超過していることが分かります。

プログノストによるオンライン状態監視 コンディションモニタリング 往復動圧縮機 予知保全 IoT ビッグデータ

安全境界値を超過しているセグメントのうち、セグメント#8のRMS値のシャットダウン前後6時間のトレンドデータも確認してみます。40m/s2を超えた段階で警報が発報、11分後にシステムが機器をシャットダウンしました。

プログノストによるオンライン状態監視 コンディションモニタリング 往復動圧縮機 予知保全 IoT ビッグデータ

ログブック(警報履歴)を調べたところ、シャットダウン21時間前に警告が、11分前には警報が発報されていたことが分かりました。

プログノストによるオンライン状態監視 コンディションモニタリング 往復動圧縮機 予知保全 IoT ビッグデータ

補足データとして、クロスヘッド振動と、ピストンロッド変位の3Dウォーターフォールトレンドも掲載します。クロスヘッド振動、ピストンロッド変位いずれも、シャットダウン直前には赤色を示しています。

プログノストによるオンライン状態監視 コンディションモニタリング 往復動圧縮機 予知保全 IoT ビッグデータ
 

h2midashi 開放結果

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h2midashi おわりに

あと数分、稼働を続けていたら、ピストンロッドやシリンダなどにまで影響を及ぼしたかもしれません。最先端の状態監視技術により、早期に不良検知ができたため、保全チームは必要な個所のみ、最適なタイミングでメンテナンスを行うことができました。

安全な機器運転の実現のためには、機器保護の役割を果たすセンサを取り付け、適切な解析と安全境界値設定を行うことが重要です。機器の固有の特徴や癖に合わせて、安全境界値を設定することができるオンライン状態監視システム「PROGNOST®」であれば、より最適な早期損傷検知、機器保護を実現可能です。

文/石田有紀


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