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低速回転設備でも適用できる?!オンライン状態監視システムを簡単解説!

Online job concept


当社では5年以上にわたり、設備保全に関するコラムを配信してきました。数年前は「ベアリング 診断」や「AE 軸受」で検索される方が多かったようなのですが、ここ最近は、オンラインシステムを検索されてWebサイトにたどり着いたという方からのお問い合わせがほとんどです。設備保全の展示会に行っても、オンラインでの状態監視を大々的に打ち出している企業を見かけることが、ここ数年増えてきましたよね。

特に多いお問い合わせが「生産ロスなどに直結する重要度の高い設備」×「低速回転」の組み合わせです。低速回転機械の診断は、製鐵といった重工業で、高い診断技術やベテラン作業員を有する企業でも、確固たる方法は確立できていないと伺ったことがあります。

そこで本日は、どの業界・業種でも関心の高まっている状態監視システムについて、解説していこうと思います。

「状態監視」とは何か?

 
そもそも状態監視とはどういうもので、その目的とは何でしょうか?

概ね以下の4つに分類されると思いますが、各企業の方針や設備によって、どこに比重を置いているかは異なります。このうちの④については、一般的にその前段階として簡易診断を行い、異常の有無を判定した後に精密診断に進みます。精密診断では、設備の状態を詳細に解析し、とるべきアクションを検討・決定します。

①劣化傾向管理による異常の早期発見
②傾向管理データから故障到達時点の予測
③自動停止等による設備の保護
④精密診断を実施するかどうかの決定

引用元:『機械設備の状態監視と診断【第3版】』 振動技術研究会

また、オンライン状態監視オフライン状態監視という分け方もできます。

オンライン状態監視とは、常時監視方式とも呼ばれ、センサを恒久設置し、24時間365日、取得したセンサの信号を演算処理し、コンピュータのデータベースで保管、場合によっては警報の発信や緊急停止を行います。

オフライン状態監視とは、間欠監視方式と呼ばれ、手持ち簡易診断器などを機械現場に持ち込み、振動などを測定し、規定の書式に測定値を記入していく方法です。

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振動法を用いた場合の測定位置と測定方向

 
汎用手法としてさまざまな現場で用いられている振動測定。簡易診断、精密診断、いずれの用途でも用いられています。例えば一般的な振動加速度センサが対象にしているのは、5-20kHz程度といわれており、私たちの可聴域もおおむねこの中に含まれます。圧電素子は水晶・ロッシェル塩でつくられることが多いようです。センサを設置し、測定をする際に以下の点に注意が必要です。

①振動測定位置は軸受部、軸受台、あるいは近接の計測しやすいケーシング外部などを選ぶ。足場や手すりなど局所的に剛性不足で振動増幅している箇所は避ける。
②横置きの回転機械では水平・垂直の2方向から計測する。あるいは、直角2方向なら傾いた方向(位相)からでもよい。
③横置きの回転機械では水平面の2方向(東西・南北)から計測する。この計測を高さ方向にわたって数か所で計測し、最も高い値を示す箇所を以後の簡易診断の測定位置とせよ。
④測定位置と方向(位相)は測定値記入台紙に矢印などで明記せよ。

引用元:『機械設備の状態監視と診断【第3版】』 振動技術研究会

例えば、ポンプであれば、下図の矢印の箇所・方向成分の測定をし、取得したデータのうち、振動の大きさ、振動の変化の程度や振動の変化の速さを基に状態監視を行います。

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オンラインであれば、センサを恒久設置することになるので、センサの設置箇所は事前に検討が必要ですし、できる限り、同型や類似の機械でどのような箇所にセンサを設置していて、きちんと信号取得、不良検知ができているのかといった情報をもとに決定したいですよね。オンラインシステム導入の際には、そういったところまでサポートを受けることができるかどうかも確認しておきたいところです。

「低速回転設備」へのオンライン状態監視システムの適用

 
一般的に、低速回転軸受やギアの振動法での診断は難しいと言われており、当社にも多くのご相談がよせられてきました。数年前までは、AE(アコースティック・エミッション)技術を用いた低速回転軸受の診断のご案内がメインだったのですが、最近は振動センサを用いたオンライン状態監視が取り扱い製品に加わったため、そちらをご紹介する機会のほうが増えてきました。なぜ元々、低速では難しいとされてきた振動法で状態監視ができるようになったのでしょうか?

一つは、解析ソフトウェアに秘密があります。従来、低速のFFT解析をした場合、傷から発せられる信号が非常に微弱なため、その他のノイズ信号に隠されてしまい、正確な診断がしづらかったのですが、当社取り扱いのPROGNOST®-Predictorのソフトウェアでは、非常に高解像度のFFT解析が可能なため、傷信号に起因する高調波をとらえることができるようになりました。

bgMidashiIconPROGNOST 製品ページ

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また、Bachmann社のOmega Guardの取り扱いも2016年ごろからスタートしました。こちらの製品ではμ(マイクロ)ブリッジセンサという材料の内密度変化を検知する特殊センサを使用することで、低速回転軸受の不良検知が可能になりました。

bgMidashiIconBachmann 製品ページ

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Omega Guardを運用、風車の主軸受でFFT解析を実施し、解放した結果、外輪の破損が検知できた実際の事例です。

どちらのシステムも、豊富な設置経験を持った担当によるセンサ設置個所のコンサルティングを受けることができますので、今までに振動診断の経験がない方でも安心してご利用いただけます。

おわりに

 
以前、仕事でIoTルームという部屋に宿泊したことがあるのですが、ルームキーから空調、カーテンの開閉までフロントで借りたスマートフォンで操作する仕様でした。その時はびっくりしたのですが、数年後にはそのような管理方法が当たり前になるように、今回、ご紹介した内容も数年後には当たり前の技術となっているかもしれませんし、まったく違う技術や製品が登場しているかもしれませんね。

ちなみに個人的にはもう一台、スマホを持ち歩くよりは、カードキーのほうが利便性いいよなぁと思いました。駅のコインロッカーのように、手持ちのSuicaやPasmoがカードキーになる世の中を希望します!

文/いしだ

参考文献:
『ISO基準に基づく機会設備の状態監視と診断(振動カテゴリーⅡ)【第3版】』,振動技術研究会

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