ベーシックなレーザー式シャフトアライメント(軸芯出し)において、結果の算出のためには3つの測定点を記録する必要があります。つまり、これら3点の測定によって、回転の中心を見ているわけです。イージーレーザー®では、3点測定用のプログラムとしてEASYTURNがあります。ほとんどの場合、このプログラムで十分で、発生する可能性のあるエラーはごくわずかです。ただし、公差が非常に小さく、繰り返し精度が求められる高速コンプレッサーやタービンなどの一部の機械では、別の測定方法が役立ちます。それがマルチポイント測定です。

イージーレーザー®にもマルチポイント用のプログラムが搭載されています。どのような場面で使用されるかをご紹介します。

マルチポイントプログラムの使用方法

測定ユニットを付属のVブラケットで取り付け、ディスプレイユニットもしくはスマートフォンアプリを起動します。[シャフト]→[水平]をタップすると、距離の入力画面が表示されます。距離を入力後、測定アイコンをタップすると、下に測定プログラムが表示されますので、そこから[マルチポイント]を選択します。測定ユニットを任意の角度傾け、緑ボタンで測定値を記録します。結果アイコンをタップすると、他のプログラムと同様、垂直/水平方向それぞれのオフセット(偏芯)と偏角が表示されます。

マルチポイントプログラムの活用例

回転が制限されているケース

場合によっては、機械の設計上、より小さな角度しか軸を回すことができないことがあります。配管、ブレーキなどにより、軸を回転することができないケースです。その場合、測定値はより敏感に変動します。追加の測定点を記録することで、振動などの影響を効果的に低減することができます。適切なフィルターレベルと組み合わせることで、ほぼすべての条件で測定を行うことができます。マルチポイントの最小回転角度は他のプログラムと同じ40°ですが、その範囲内で複数の測定点を記録することで、結果の品質をさらに向上させることができます。

非回転シャフトの軸芯出し

マルチポイントのもう1つの用途は、非回転のシャフト(軸が固定された機械)です。スライドブラケットを使用する場合、測定は実際の回転軸ではなくブラケットを取り付けた部分の表面の状態に依存します。つまり、表面に歪みや粗さがあると、測定精度は下がります。シャフトを1回転することができるのであれば、できる限り角度を広く取りながら追加の測定点を多く記録することで、難しい設備であっても信頼性のある結果が得られます。

タービンアライメント

タービンのような大型機器は、軸の手回し不可なので、クレーンやウィンチ等で軸を回転させる場合があります。この方法では軸の回転位相を制御することができません。しかし、マルチポイントは個々の計測点における位相角を記録しているので、仮に制御が難しい今回のような回転手法でも、高精度のアライメントを達成するうえで必要な複数の計測点を、比較的容易に網羅していくことができます。可能であれば、360度回転させながら少なくとも6〜8個の測定点を記録すると、高精度な測定になります。過度の振動がある環境では、フィルター機能を使用し、値を安定させます。なお、測定点を記録する前に、ウィンチなどで引いた負荷状態ではないことを確認することは、本作業の重要なポイントになります。

結果に影響を与える要因

最後に、結果に影響を与える要因についても簡単に確認しておきましょう。測定結果にわずかなばらつきが出る理由はいくつかあります。例えば、隣接する機械からの振動、温度変化、ベアリングクリアランスなどがあります。

測定の方向も結果に影響します。ピストンエンジンと往復動圧縮機は、軸を回転する際、出力シャフトにわずかに楕円形の動きを生じさせます。また、ダンパー付き脚の上に設置された機械は、アライメント調整中に予期しない動きをする可能性があります。

翻訳・編集／いしだ

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