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pV線図活用によるライダーリングの不良検知事例

Early detection of rider ring damage on a Free Floating Piston3

フリーフローティングピストンを採用したトマッセン社製の往復動圧縮機を使用している海外企業のケーススタディをご紹介します。

機器の概要/経緯

 
・トマッセン社製2列2筒ピストン式水素圧縮機
・HydroCOMを利用した流量調整機能あり
当該機は無潤滑式圧縮機で、ライダーリング寿命の最適化を図るため、フリーフローティングピストンを搭載していました。しかし圧縮機を稼働した初期のころから、両段のピストンリング寿命は1,500時間程度で、しかも短寿命の傾向にありました。

<1段ピストンリングの使用実績>
・1,850 hrs
・707 hrs
・891 hrs
・801 hrs
・1,607 hrs
<2段ピストンリングの使用実績>
・3,773 hrs
・4,006 hrs

データ解析:不良個所診断

 
オンライン状態監視システム「PROGNOST®」による状態監視で、pV線図解析を実施したところ、2段トップとクランク側の膨張ライン、圧縮ラインいずれも正常時との差異が見られます。

プログノストによるオンライン状態監視 コンディションモニタリング
→2段ボトム側:想定よりも早く吸入圧を下回り、再膨張と圧縮ラインは通常よりも鋭角なラインとなっている。

プログノストによるオンライン状態監視 コンディションモニタリング
→2段トップ側:想定よりも吸入圧を下回るのが遅く、再膨張ラインは通常よりも鋭角なラインで、圧縮ラインは通常よりもフラットな状態である。

このことからボトム側は吸入弁漏れもしくはピストンリングからの漏れの可能性があり、トップ側はピストンリング破損によるボトム側からのガス流入の可能性があるといえます。

開放結果

 
開放の結果、ピストンリングの過剰摩耗、ライダーリングの割れ(トップ写真)、さらに吐出弁の閉塞も確認されました。詳細調査結果はユーザや機器メーカから開示されていませんが、異物混入が想定されるプロセスであり、運転中は吸入弁・吐出弁ともに異物が閉塞し、リークの多い状態が発生したと想定されています。

また、この異物影響でピストンリング摩耗が進み、シール機能を失ったピストンリングの代わりにライダーリングがガスシールをしようとする結果、今回のような破損につながったと想定されます。

おわりに

 
プロセス中の異物影響は常時でないことも多く、どのタイミングで摩耗が進んでいるか判断が難しいですが、PROGNOSTシステムを用いればその兆候を早期に確認することができます。

文/いしだ


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