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往復動圧縮機に混入した液体物検知の方法

How to detect liquid carryover in reciprocating machinery

状態監視システムで、往復動圧縮機の内部を通過する液体物の検知することができますが、どのような情報をもとに検知しているのでしょうか。PROGNOSTシステムズ社が解説しているYouTube動画link1からご紹介します。

着目すべきパラメータ

 
液体物というのは、往復動圧縮機にとって非常に危険な存在です。液体スラグが機械に与える損傷は大きいことから、稼働している機械でどのように液体物を検知するのかという質問をよく受けます。シリンダを通り抜ける、非常に小さいなかたまりを検知するためには、どのようなパラメータに着目すればよいのでしょうか。

プログノスト PROGNOST 状態監視システム モニタリングシステム

こちらの図を用いて説明しましょう。横軸はクランクシャフト1回転を示しており、左からピストンが上死点にあるとき、下死点にあるとき、再び上死点に戻ったときを表しています。それぞれの線が表している信号は下記の通りです。

白線:クロスヘッドに取り付けた振動加速度計が取得している信号
赤線:ピストンロッドの変位を示す信号
黄色線:シリンダ内部の動的圧力を示す信号

この図はピストンロッドがスムーズに動いている、良好状態を示しています。振動もpV線図も特に問題は見られません。

それではシリンダ内に液体物が混入した場合、どのような変化が現れるでしょうか。

プログノスト PROGNOST 状態監視システム モニタリングシステム

まず、クロスヘッドの振動がこのように増加します。同じクランク角度でピストンロッドの変位に大きな変化が見られます。これは液体物の上を乗りあげるようにピストンが摺動していることを示します。ロッド位相が変化し、それと構造的につながっているクロスヘッドで振動が検知されるのです。

ピストンは上死点から下死点へと動いていき、ボトム側シリンダ内のガスが昇圧しているときであり、非常に高圧なガスがシリンダ内にある状況です。そこからガスの排出、すなわち吐出行程が始まったとき、高振動とピストンロッドの大きな変化が同時に起こっています。ただし、圧力には変化はありません。圧力については、通り過ぎるだけの小さな液体物による影響は受けないということです。

ここからわかることは、ガスの圧縮行程でシリンダ下部に液体物があり、ピストンが下死点に近づき吐出行程に入る段階では、液体物に加わる圧力も同時に高くなっていきます。そして液体物の一部がピストンの下に入り込むことで、ピストン位相は上がります。同時に、このように大きな振動が発生し、液体物は吐出弁を通り、配管へと流れ出ます。ピストンロッド全体が浮動してしまい、クロスヘッドではピストンをしっかりガイドすることができませんので、振動が発生するわけです。

下死点を通過した後、圧力が下がり始めたころから、すべて平常に戻ります。これを効果的に検知するためには、毎回転の状態を監視する必要があります。クランク角度ごとの変化を検知するためには、監視を自動化することが求められます。この自動化というのが非常に重要です。なぜなら、異常は深夜に起こるかもしれませんし、それはわずか数回転にしか反映されないからです。液体物がシリンダに混入してから、わずか10~15回転で吐出弁から排出されてしまい、その後はすべてが平常に戻ります。この実際起きている問題に気付くことは難しい一方で、(この信号を見れば)脈動緩衝用タンク内に多量の液体が堆積している可能性を誰もが想像できます。

例えば、大きな液体物の塊がシリンダ内を通過すると、その液体スラグがメカニカルな問題を引き起こし、機械か、少なくともシリンダに損傷を与えるかもしれません。最近のシステムは機械の内部で起こる、これらの問題を早期段階で検知することが可能です。小さな液体物が通過したことがわかれば、配管や脈動緩衝タンクも調べるアクションを取ることができます。もし大量の液体物が混入したのであれば、運転側で頻繁に排出するようにすることで、機械運転において危険な液体スラグから機械を守ることができるでしょう。

ロッドポジションセンサ位置とグラフの関係

 
プログノスト PROGNOST 状態監視システム モニタリングシステム

センサがロッド上部にあり、液体物を乗り上げることでロッドポジションが上がるのであれば、測定値はこのように下がるのではないかという疑問をお持ちの方もいるかもしれません。その点についてもふれてきます。

破片の影響を避けるために、通常はロッドの上にセンサを設置しロッドポジションを見ます。当社のシステムでは、わかりやすくするためソフトウェア上で波形を反転して表示しています。

おわりに

 
このような1秒にも満たない出来事の場合、常時状態監視システムを使用することが有用です。実際のデータを解説したコラムもありますので、ぜひご覧ください。

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翻訳・編集/いしだ


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