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6.162020
「●●値のトレンド管理」で大型ギアボックスの計画的メンテナンスを実現したケーススタディ
以前、押し出し機に関するコラムを掲載したところ、反響がありました。特に、ギアボックスの不良検知が課題になっている企業は多く、昨年は食品会社や化学メーカーのご担当からご相談が寄せられました。
そこで今回は、計画的メンテナンスを可能にしたオンラインシステム「PROGNOST®-Predictor」による不良検知の実例をご紹介したいと思いますが、その前にPROGNOST®-Predictorがどのように不良を早期に検知しているのか、その仕組みを簡単に説明していきます。
PROGNOST®-Predictorでは、なぜ早期に不良検知ができるのか?
PROGNOST®-Predictorは、高周波数エンベロープ処理(HFE)をベースに「自動診断」を実施します。この自動診断はなんと20rpm以上の低速回転に対応。軸受やギアの諸元情報と、回転計から取得した実回転周波数から損傷周波数を算出、それらを常時監視することで、不良を早期検知します。
早期不良検知を実現する特許技術「コンフィデンス値」
コンフィデンス値とは、軸受の各損傷周波数をベースに計算される独自パラメータです。仮に部品不良の進展を示す明瞭な兆候または振幅の増加が見られると、図上に反映されます。この傾向をチェックし、警報閾値を調整することで、起こりうる損傷を的確に監視することができます。
タイトルの「●●値のトレンド管理」とは、このコンフィデンス値のことです。この値のトレンドと、振動平均値をチェックすることで、起こりうる損傷を的確に監視することができます。
ケーススタディ概要
ここからはケーススタディをご紹介していきます。計測対象設備は下図のような構造で、モーターの回転数は1495rpmでした。
<経緯>
①初期段階ではHFE(高周波エンベロープ)におけるコンフィデンス値と振幅値のトレンドを確認。
②HFE FFTにおけるコンフィデンス値が徐々に増加。
③診断にあたっては複数のセンサを使用。
④HFEにおける加速度振幅値の上昇を確認。
⑤最終的には加速度FFTでも不良検知。
⑥ギアボックスの負荷減少(処理量減少)するも、コンフィデンス値90%の状態が続いたため、機器停止に関して、ユーザー、ギアボックス供給OEM、プログノスト診断サービスチームの三者間で協議を実施。
⑦計画停止の3か月前に開放し、外輪傷を発見。
<コンフィデンス値と振幅のトレンド>
A) 2016年7月29日:異常なし
B) 2016年8月9日:コンフィデンス値上昇
C) 2016年11月7日:振幅の増加
D) 2016年11月9日:振幅がさらに増加
E) 2016年11月14日:ギアボックス負荷減少(処理量減少)
F) 2016年12月上旬:補修後
機器開放の決定
このような自動診断結果を受け、ユーザー、プログノストシステムズ社の解析チーム、ギアボックスベンダーの3社間協議を実施しました。ギアボックスの処理量を減少させ様子を見ましたが、コンフィデンス値が高い状態が続いたため、部品交換のため開放を行ったところ、453Bの軸受外輪に傷が発生していました。
おわりに
最後に、ユーザーの声をご紹介します。
ユーザーのコメント
「PROGNOST社のシステムを採用した結果、軸受不良を早期に検知できました。今回の事例で信頼にたる監視システムであることを証明してくれました。また、PROGNOST社の解析チーム、ギアボックスベンダーとのオープンな対話は、今回の事例において大いにプラスに働きました」
文/いしだ