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オンライン状態監視用センサ設置のポイントとは?往復動圧縮機の特色を理解して設置しよう!

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トップの写真には往復動圧縮機の模式図が描かれています。一番左側にあるのが、クランクケース(クランクシャフト)とフライホイールです。コネクティングロッドを介してクランクシャフトの回転運動をクロスヘッドにてピストンロッドの往復運動に変換しています。そして、一番右側に書いてあるのがピストンとシリンダです。シリンダには吸入弁と吐出弁がトップ側、ボトム側それぞれ1個ずつある構造です。

PROGNOST社に在籍し、25年以上のフィールド経験を持つ担当が解説したYouTubeから「オンライン状態監視用センサ設置のポイント」を日本語解説でお届けします。

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往復動圧縮機のオンライン状態監視でポイントとなるセンサの設置個所

 
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まず、オンライン状態監視をはじめるにあたり、欠かせないセンサが回転計(トリガー)です。トリガーカムがセンサを通過した際、センサはクランクシャフトが1回転したと認識します。

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続いて速度センサを設置します(オレンジ矢印)。クランクケースの駆動側と被駆動側の両方、水平方向に設置します。このセンサは、往復動圧縮機全体のアンバランスや、クランクケースと基礎の接続部の緩み、基礎の割れ(クラック)の検知に役立ちます。

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クロスヘッドは、往復動圧縮機において致命的損傷を引き起こす可能性の高い駆動部品の一つです。クロスヘッドでは、クランクシャフトの回転運動をピストンロッドの往復動に変える役割を担っています。

クロスヘッドガイドの中で振れが発生したことを速度計が検知するケースでは、いくつかの原因が考えられます。①クロスヘッドとピストンロッドもしくはピストンの接続部の緩み、②シリンダにドレンなどが入り込み、ピストンと衝突した、③ライダーリングの損傷などです。クロスヘッド部に振動加速度センサを設置する方向は、クランクシャフトの回転方向により異なります。

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近接センサ(ロッドポジションセンサ)は、センサの先端部とピストンロッド間の変位(距離)を測定します。これにより、ライダーリング摩耗のモニタリングと機器保護を実施することができます。

通常、ピストンロッドは水平方向にのみ往復動しますが、接続部の緩みが発生した場合は、垂直方向にロッドが振れます。このようなピストンロッドの動きをシステムがクランクシャフト1回転ごとに評価し、必要に応じて機器保護(システムによる自動緊急停止)を行います。

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バルブ(シリンダ弁)の不良検知に関するセンサをご紹介しましょう。吸入弁、吐出弁いずれの不良も検知するために、シリンダの中央部(トップ側とボトム側の中間)で、吸入配管に近い位置に振動加速度センサを設置することを推奨しています。このように設置することで、すべてのバルブ挙動を的確に把握でき、弁内部部品の固着などに起因する閉じ遅れなどの異常や、プレートやディスクの破損を知る手掛かりとなります。

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圧縮効率を知るためには、動的圧力センサをそれぞれの圧縮室内(トップ側/ボトム側シリンダ内)に設置します。通常はAPI準拠のインディケーターポートに設置しますが、このポートがない場合は、別の手段を講じることもできます。

よくある質問「ワイヤレスセンサに対応していますか?」

 
往復動圧縮機のオンライン状態監視システムにワイヤレス(無線)センサは適用できるかという質問が多く寄せられます。確かに、ワイヤレスセンサは、計装関連のコスト面から魅力的な選択肢ではありますが、PROGNOST社の見解は、現時点では有線のセンサのみ使用するというものです。その理由は主に2つあります。

一つは、オンライン状態監視というのは、センサから取得したアナログ信号を常時送り続けてこそ、最適な監視と診断ができるという考えに基づいています。ワイヤレスセンサは、一定の間隔で信号を発信する仕組みになっています。そのため、クランクシャフト1回転ごとの解析が不可欠な往復動圧縮機のオンライン状態監視には向いていません。

もう一つの理由は、処理するデータの容量にあります。例えば、25kHzのサンプリングレートでデータ取得を行った場合、1日あたり2TB(テラバイト)のデータ処理を行うことになります。この容量をワイヤレスセンサで処理することはできないからです。

おわりに

 
YouTubeでは同様の内容を約8分にわたり、解説しています。日本語字幕も選択できます。

文/いしだ


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