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[まとめ記事] AE (アコースティック・エミッション)とは?その優位性を簡単解説!

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以前の記事でご紹介したベアリングの診断手法の一つ、アコースティック・エミッション(Acoustic Emission/AE)。
「AEとはどういった現象なのか?」「汎用的な診断手法である振動との相違点は?」「AEの優位性は何なのか?」
よくあるご質問を一つずつ解説していきます。

AEとは?

 
AEとは、Acoustic Emission(アコースティック・エミッション)の略で、一般的には下記のように定義されています。

アコースティック・エミッション(Acoustic Emission, AE)とは、材料が変形あるいは破壊する際に、内部に蓄えていた弾性エネルギーを音波(弾性波、AE波)として放出する現象である。

引用元:Wikipedia

身近に存在するAE

 
実はこのAE、私たちの身近で起こっている現象なんです。地震もその一種といえます。地盤の移動が起こったとき、弾性波が放出されるため、私たちは揺れを感じます。

その他には割り箸が挙げられます。割り箸の端を持ち、力を加えていくと、「メキメキメキッ」という音がして最終的には「ボキッ」と折れると思います。 実はこの「メキメキメキッ」と割り箸に力が加わっているときに発生しているのがAEなのです。『材料が変形あるいは破壊する際』に『弾性エネルギーが放出』されているんですね。

AEの歴史

 
AEは1961年、米国の航空宇宙産業で試験目的で使用されるようになり、1963年に高圧容器、1965年には核反応容器の非破壊試験目的で使用されるようになったそうです。

静機器にはじまり、重要設備や攪拌機などの低速回転設備が比較的多い石油化学プラントや製鉄・製紙会社で、動機器へのAEの適用性が検証されてきました。
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AEセンサと振動センサの違い

 
AEの周波数帯域は数10kHz~数MHzといわれており、私たちの可聴域(~20kHz程度)よりもはるかに高周波領域です。振動計が対象にしているのは、5-20kHz程度といわれていますので、一般的な振動加速度センサでは難しいといわれています(周波数帯域には諸説あります)。

この高周波信号を検出するために作られたのがAEセンサです。稼働中の設備、特に転がり軸受の診断など、AE技術を応用したモニタリング手法が確立されてきました。

では、その高周波信号を取得できるAEセンサと、振動加速度センサの違いは何なのでしょうか。そのポイントとなるのが、圧電素子です。

センサ名 圧電素子 測定周波数
振動加速度センサ 水晶・ロッシェル塩 5Hz~20kHz程度
AEセンサ PZT(ジルコン酸チタン酸・鉛) 数10kHz~数MHz

AEセンサの圧電素子は、高周波数帯域の信号取得に有効な感度を備えているのが特徴です。
振動加速度センサ、AEセンサの共通点は、圧電素子は力を受けると電気を流すという点です。

精密診断に向いている振動法、初期不良に優位性のあるAE

 
私たちに最も馴染みがある振動法は、アンバランスやミスアライメントといった低周波数領域の異常にとどまらず、歯車の摩耗やポンプのキャビテーションなど高周波領域の異常などにも適用可能なため、回転機全般の精密診断に適しています。

一方、AEは潤滑不良などから発生した転がり疲れ(初期不良)を早期に検知することが可能な技術で、振動法では診断が難しい低速回転軸受への適用事例も報告されています。

AEの優位性:『広範』『早期』『簡単』

 

  • 低速機を含む「広範な」回転機器に対応
  • 初期段階での微細なトラブルも「早期に」発見
  • 管理値の事前計算が必要なく「簡単に」診断判定が可能

一長一短という言葉がありますが、まさに計測器の世界にも得手・不得手があります。詳細な診断ができる、ということはそれだけいろいろな情報が必要になります。軸受であれば型式や回転数、ギヤであれば噛み合い周波数などの情報を事前に取得しなければなりません。また、振動加速度・速度・変位による計測値で、低速回転機の軸受診断は難しいとされています。

AEでの軸受診断では、「金属同士が接触した際の、ミクロレベルの破壊に伴い発生するエネルギー波」をとらえるため、低速回転機であっても適用ができます。このエネルギー波は、水面に広がる波紋のようなイメージです。石ころのような小さな物体でも、投げ込むとそこを起点に波紋ができますよね。AEも潤滑不良が発生し、金属同士の接触が起きると、エネルギー波がケーシングなどの金属を介し伝播します。

AEはどんなに小さい傷や摩擦でも発生しているため、「早期に」トラブルを発見することができますし、低速の場合でもAEは伝播するため、「広範な」機器で使用できる技術なのです。先ほどお話した通り、AEは放射状に広がる性質を持つため、ケーシングなど金属性のものであればどこでもその弾性エネルギーをとらえることができます。

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おわりに

 
微細な傷・摩擦は、上図に示したような「突発型AE」として検出されます。回転数とは無関係に、微小破壊そのものをAE信号として定量化する計測器もあります。精密診断が得意な振動計と並行してその時々に応じた計測・診断ができると効率が上がりそうですね。

 
文/いしだ


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