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風車のメンテナンス作業時間の削減を実現!レーザー式芯出しとは?

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以前、「風車ならではの芯出しの課題」と「レーザー式芯出しシステムのメリット」について記事を書きました。

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本日は、レーザー式芯出しシステムを使用することで、いったいどの程度の時間削減につながったのか?について、ふれたいと思います。

風車ならではの芯出しの課題とは

 
発電に必要な回転数に増幅させる増速機は風車に必要不可欠な存在です。ブレード(羽根)が風を受けることで、径の大きな主軸がゆっくりと回転し、接続された増速機が高速で回転する。こうして得た動的エネルギーを発電機で電気に変換しているんですね。

日本では一般的に、増速機―発電機間のカップリング芯出しにダイヤルゲージが用いられています。しかし、ダイヤルゲージによる芯出し・調整では、カップリングの取り外しが必要で風による振動の影響を受けるため、待ち時間が長くなるケースがあり、1基あたり2日を要することもあるそうです。2日間風車が止まれば、当然つくられる電気量は減少しますよね。この時間を短縮することは重要な課題といえます。

また、カップリングの仕様によっては偏心・偏角公差がシビアなため、精密かつ定期的な芯出しが必要ですが、一部の風車で用いられているカップリングスペーサーは鉄製で重く、現場での取り外し作業が困難です。そのため、カップリングを分解せず、芯出しをすることが求められます。これも課題として挙げられます。

レーザー式芯出しシステムの特徴とメリット

 
レーザー式の芯出しシステムの大きなメリットは、「カップリングを分解しないで芯出しができる」という点です。そのほか、ダイヤルゲージと比べ、分解能が高く(ダイヤルゲージ;0.01mm、レーザー式;0.001mm)、初心者でも簡単に使用できるのが特徴です。レーザー式は、欧州だけでなく米国でも10年以上前から導入が進んでいます。

【レーザー式芯出しシステムの特徴】
○ 難しい操作はなく、1日のトレーニングで芯出し作業を習得できます。
○ 正確な精度の芯出しが可能です(シャフトアライメント時最高分解能:0.001mm)
○ 最小40度のレーザーユニット回転で測定できます。
○ ライブモード採用により、シム調整結果が即表示されるため、再計測は基本不要です。作業時間短縮を実現します。
○ 計測結果をレポート化。デジタルでの作業報告書提出が可能です。
○ システム拡張性(ロール平行度確認といったジオメトリー測定に対応)

ライブモード採用により、シム調整結果が即表示されるため、再計測は基本不要で、作業時間短縮を実現します。ライブモードとは、軸(シャフト)を半回転程度回すだけで、ディスプレイユニットに現状の偏芯・偏角、そして調整シムの厚みまで瞬時に表示する機能です。

レーザー式はダイヤルゲージの共回しの原理と同じで、両軸の回転軸からのオフセットをみています。そこから三角法によりシム調整値をシステムが自動で算出します。
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また、ディスプレイユニットをPCに接続すれば、計測結果を簡単にレポート化できるので、芯出し測定結果の見える化、報告書作成の手間の削減ができます。

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風車でレーザー式システムを使用するときの注意点は?

 
風車のナセルに設置された増速機-発電機間をつなぐカップリングには、下図のようなブレーキディスクがついたタイプが使用されることがあります。
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レーザー式ユニットを使用してカップリングを分解せず、芯出しを行う場合、増速機側シャフトと発電機側シャフトそれぞれにレーザーユニットを取り付ける必要があります。しかし、増速機側シャフト用のレーザーユニットは、ブレーキディスクに阻まれてしまうため、通常のチェーンによる固定ができません。仮にブレーキディスク端面に設置する場合には十分な精度での固定と、ブレーキパッドやカバーと緩衝しないことが条件となります。
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弊社では緩衝物を回避しながら確実に固定ができるブラケットの設計・製作を行っています。これらのブラケットはマグネット式になっており、簡単に着脱可能です。

レーザー式システムによる測定

 
ある事業所で、ブラケットとレーザー式システム『イージーレーザー®(Easy-Laser®)』をあわせて導入いただきました。

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定期点検の際、発電機の芯出しを従来のダイヤルゲージによる計測ではなく、導入いただいた『イージーレーザー® シャフトアライメント』をご利用いただいたところ、1基あたりの作業時間が約60%改善されました

 
従来:ダイヤルゲージを用いたアライメント
カップリングの取り外しが必要で風による振動の影響を受けるため、待ち時間が長くなることがある。

導入後:『イージーレーザー®』によるアライメント
カップリングの取り外しが不要で、風による振動の影響を受けにくい。

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おわりに

 
風車のメンテナンスにおいては、主軸受の状態診断も重要な事項の一つにあがってきます。径が大きく、回転数が低いので、汎用的な振動計では診断が難しいケースが多いと聞きます。

弊社で取り扱っておりますEMセンサは、電磁誘導の原理を応用したセンサで、低速回転設備の診断に優位性があります。関連ブログもあわせてご参照ください。

文/いしだ

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