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1.192016
AE信号(アコースティック・エミッション)を読み解く
AE(Acoustic Emission)信号には、2つの種類があることはご存知ですか?本日はAEについて復習しながら、2つの信号の違いについて見ていきましょう。
AEとは?
AEとは、Acoustic Emission(アコースティック・エミッション)の略で、一般的には下記のように定義されています。
アコースティック・エミッション(Acoustic Emission, AE)とは、材料が変形あるいは破壊する際に、内部に蓄えていた弾性エネルギーを音波(弾性波、AE波)として放出する現象である。
引用元:Wikipedia
この「AE」という技術は、1960年代に航空宇宙産業で試験目的で導入され始め、1990代には稼働中の設備(特に転がり軸受)のモニタリング手法として応用されるようになりました。
AEの優位性
私たちに最も馴染みがある振動法は、アンバランスやミスアライメントといった低周波数領域に発生する異常にとどまらず、歯車の摩耗やポンプのキャビテーションなど高周波領域に発生する異常などにも適用可能なため、回転機全般の精密診断に適しています。
一方、AEは潤滑不良などから発生した転がり疲れ(初期不良)を早期に検知することが可能な技術です。 また、振動法では診断が難しい低速回転軸受への適用事例も報告されています。
「突発型AE」と「連続型AE」の違い
AE信号は、性質の異なる2つの信号にわけられます。1つは、下図(a)で示されるように、弾性波が立ち上がり、その後減衰していく「突発型AE」、もう一つは摩擦・摩耗現象が起因とされる(b)「連続型AE」です。
観測されるAE信号は性質が異なる2種類に分類できる。1つは図1.2-4(a)で示すような弾性波が立ち上がり、鋭く減衰する突発型波形である。突発型波形は主に固体内で生じる亀裂進展や変態に伴い放出される。また、突発型波形の振幅値は亀裂の大きさや一度に進展した距離と関係している。
もう一つ図1.2-4(b)で示すような連続型波形は、突発型波形が多数重なって発生したものと考えられ、主に材料の変形、摩擦・磨耗あるいは漏洩により発生する場合は多く、振幅値はその現象の大きさに関係する。
引用元:『超音波法による転がり軸受の異常診断技術』 高知工科大学大学院
転がり軸受においては、この突発型の波形は潤滑不良が起こり、金属同士が接触した際、ミクロレベルの破壊に伴い発生するエネルギー波を捉えています。この信号は回転数とは無関係に発生するため、微小破壊そのものの信号として定量化をする技術の研究が進みました。
現在では、1. 初期不良検知、2. 低速への適用性の2点がAEの主な優位性とされています。
おわりに
類似の検査法として挙げられることが多い手法に、「超音波法」があります。超音波法は、超音波を入射し、その反射波で異常を診断する能動型であるのに対し、AE法は固体から発せられる弾性波をセンサで検出する受動型の検査法です。超音波で検出できる領域は、超音波の照射領域内に限られてしまいますが、AEは金属接触していれば波状に伝播します。
検査対象物にあわせて、適切な検査法を適用することが重要です。
文/いしだ