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ギアボックスの状態診断に用いられる3つの解析手法 ~後編~

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前回のコラムでは、ギアモニタリングにおいて重要な噛み合い周波数について解説しました。

今回は他の有用な解析手法である時間同期平均化(TSA)についてです。
 

h2midashi 時間同期平均化(TSA)とは

時間同期平均化(以降TSAと表記)も加速度データを用いますが、スペクトラムデータに変換するのではなく、時間波形を使用します。そのため、y軸は加速度、単位は[g]または[m/s2]のままですが、x軸は時間となります。

プログノストによるオンライン状態監視 コンディションモニタリング

重要なのは1回転中の時間同期平均化が示されることです。記録した1回転の振動は、このような波形になります。これらのピークすべてが2つの歯の噛み合い、接触を示しています。1回転360°の間、これを数えた時に15回の歯の接触があったとしましょう。

プログノストによるオンライン状態監視 コンディションモニタリング

当然、複数回の回転が行われるので、最大数千の時間波形がキャプチャされます。時間の経過とともに、それらはすべて同じようなパターンの波形になります。なぜなら、ノイズやランダムに発生する振動(緑枠内の時間波形)は、時間経過とともに減衰します。同じことがTSAにも当てはまります。

ここで仮に歯数15のギアの1回転振動に制限して評価した場合、歯数40のギアからの振動の影響は出てきません。理由は、歯数15のギアの1回転データにおいて、歯数40のギアのかみ合いは同期性(繰り返し性)が無いために、時間経過とともにフラットアウトする性質があるからです。
 

h2midashi クートシスを用いた解析

TSAはクートシスと呼ばれる解析手法にも用いられます。クートシスとは、隣の波形と比較した時にどの程度類似した形をしているかを反映するものです。これは、すべてのサンプルポイントをガウス曲線に入れる統計学的評価です。ガウス曲線は正規分布かつ、クートシスの値は1であることが理想です。

ギアの歯のどこか1か所が欠けた時、波形はどうなるでしょうか。途中までは従来通りの波形ですが、ある1点で歯欠けに起因するピークが発生します。例えば、歯欠けが1か所であれば、そこが反対のギアと接触するたびに、その衝撃がピークとなって現れます。このピークは回転する軸の必ず同じ角度で発生します。この場合、欠けた歯がこの位置で繰り返し接触し、パターンを形成します。

これをクートシス、すなわち統計学的評価に置き換えてみると、非常に大きなピークの影響でクートシスは1よりも大きくなります。このクートシスの値をチェックすると、通常、おおよそ3から10の間に入ってきます。欠けた歯がある時は、クートシスは50倍~100倍の値になってきます。

プログノストによるオンライン状態監視 コンディションモニタリング
クートシス解析の一例

TSAについて注意したい点が2つあります。まず、クートシス解析は微小な変化を評価するため、対象軸の1回転中に同周期で発生する振動は全て拾ってしまいます。機器運転に伴う振動が定周期で発生すれば、その振動もまたTSA信号に反映されますし、解析上はその振動が基準(ベースライン)になっていることも理解しておく必要があります。もう一点は、前のセッションで説明した高周波エンベロープ処理といった信号処理を施したうえで、TSA信号処理もまた可能である点です。
 

h2midashi 振動加速度センサはどこに取り付けるべき?

大型のギアボックスの監視には通常、何個のセンサを取り付けるべきかという質問を受けます。

経験則をお話すると、大型のギアボックスの場合は各軸の両側、ラジアル方向に一つずつ、アキシャル方向に一つずつ、ギアボックスのケースの側面と上部に取り付けることを推奨します。解析に有意なセンサ信号を取得するためには荷重伝搬性を考慮して、各軸受ラジアル方向、また各軸のスラスト方向に1個、つまり合計6個の振動加速度センサと回転速度センサの設置が望ましいです。
 

h2midashi おわりに

2回にわたり、ギアモニタリングに欠かせない「嚙み合い周波数」「時間同期平均化」「クートシス」3つの解析手法を解説しました。

PROGNOST®-Predictorでは、システムがこれらの解析手法を用い、自動で診断を行います。オンラインでの御打合せにて不良検知事例のご紹介も可能です。ご興味ある方はこちらからお気軽にご連絡ください。

翻訳・編集/水野剛、いしだ


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