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機械損傷の原因の3割は精密部品である○○が原因?!

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回転機械の損傷原因として思い浮かぶ現象は何でしょうか。カップリングのミスアライメント、羽根のアンバランス、シール部品やモーターの異常……回転機械はさまざまな部品で構成されているので、一つの部品の不良が他の部品の異常、強いては機械の停止につながってしまうこともあります。

そこで回転機械の主な異常発生原因と、異常が起こりやすい部品とその精度を調べてみました。
 

回転機械の異常原因

まずはじめに、ポンプを例に考えられる不良発生個所を見ていきましょう。

● 羽根
● シール部品 (グランドパッキン/メカニカルシール)
● 軸受
● カップリング
● ケーシング

羽根のアンバランスだけでなく、ケーシングの腐食や、シール部分からの漏れなど、多くの要因が潜んでいます。

中でも軸受(ベアリング)は、不良が起こる可能性の高い部品として知られています。

18業種511事業所の実態調査結果をもとに1995年3月に潤滑油協会から発表された「潤滑管理効率化促進調査報告書」によると、破損割合の最も高い機械要素は転がり軸受で約3割を占めていたそうです。

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軸受(ベアリング)の種類

遠心ポンプでは、一般的に次の5つの種類の軸受が使用されています。

● 単列深みぞ玉軸受
● 複列深みぞ玉軸受
● 単列アンギュラコンタクト玉軸受
● 複列アンギュラコンタクト玉軸受
● 単列アンギュラ背面組み合わせ複列軸受
 

軸受の精度

軸受がいかに高精度な部品であるかを示した文章を見つけました。

最新のJIS B 1501(2009)では、さらに高精度になり、100mm程度の推奨寸法(直径)で表面粗さが0.010μmという玉が記載されています。100mmの玉を地球に置き換えると、表面粗さの高さは人間程度ということになります。これがベアリングの精度の世界なのです。

引用元:『よくわかる最新ベアリングの基本と仕組み』,秀和システム,2011

新品のベアリングがそれだけの精度ということは、摩擦や微小傷レベルでもダメージとしては大きいですね。ましてや、私たちの目に見てわかる傷が発生した段階では、今まで人間しか立っていなかった世界にいきなり海や山が現れるようなもの。軸受というのがいかに注意深く観察する必要がある部品か、納得いただけるのではないでしょうか。

ちなみに1988年時点のJISでは、直径12mmの玉を地球に置き換えた場合、12m程度で鎌倉の大仏の高さだったそうです。30年前の時点でもそれほどの精度があったのにもかかわらず、常に研究・開発をし続けてきたメーカーの熱意を感じます。
 

軸受の潤滑

同じく回転機械に重要な部品の一つ、カップリングであれば、ある程度のミスアライメントは吸収するよう設計されています。しかし、軸受は非常に精密に設計されているがために、わずかな摩擦や摩耗も毛嫌いする部品です。

そこで必要になるのが潤滑です。グリース方式が一般的で、一部、屋外にあるポンプなどは油潤滑方式をとることがあるようです。潤滑油の粘度は軸受に大きな影響を与え、粘度が大きいほど潤滑油膜の形成能力が向上します。それぞれの型式や運転条件にあわせた潤滑がなされていることが重要です。

しかし、潤滑が十分でなかったり、選定を間違えたりした場合は、転がり疲れを加速させる要因となり、最終的にははく離と呼ばれる損傷(フレーキング)を引き起こします。

その他にも、フレッチング(一種の摩耗現象)や割れ・欠けといった軸受不良も考えられます。いずれの現象にしても、予想寿命よりも早く損傷してしまう可能性が高くなります。

対策としては、潤滑不良を起こさないよう注意を払うことはもちろん、定期的な軸受のチェックが欠かせません。ただ、先ほど例にあげたように、地球の表面上の人間や小さな池を探し出すのは困難なのと同じで、目視で軸受に傷がないかを判別するのは大変ですよね。そもそも、不良が起きているかもわからないのに、機械を止めて開放することはできません。

そこで研究・開発が進められたのが、振動センサやAEセンサといった機械を運転しながら軸受の状態をチェックできるツールです。これらのセンサは摩擦や傷から発生する振動成分(変位・速度・加速度)や弾性波(AE/アコースティック・エミッション)を取得し、演算処理することで軸受の現在の状態を教えてくれます。
 

さいごに

軸受はポンプだけでなく、さまざまな回転機械に欠かせない存在です。展示会などでお話をうかがうと、みなさん何らかの診断を行っています。しかし、その診断方法は企業によって実にさまざま。化学会社など、機械の停止=生産ロスとなってしまう会社は特に軸受診断に力を入れている傾向が強いように感じます。

どんな業種であっても計画的なメンテナンスが求められる回転機械。軸受の潤滑だけでなく、しっかり傾向管理を行って寿命をまっとうさせてあげたいですね。

文/いしだ

参考文献:
『機械の診断・評価技術に関する調査報告書-転がり軸受の異常予知と材料評価-』,D&E 研究会,pp.1,10,1996
『ポンプの本』 日本プラントメンテナンス協会,2005,第9版
『よくわかる最新ベアリングの基本と仕組み』,秀和システム,2011


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