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たびたび発生するポンプの故障…。不良発生個所と整備のポイントをチェック!

pump

回転機械の代表選手ともいえるポンプ。長期間使用したポンプは、軸受の劣化や流量の低下が発生している可能性も…。そこで今日はポンプで起こりうる異常・不良個所を解説、整備時にチェックすべきポイントをご紹介します。

ポンプで考えられる異常発生原因とは?

 
ポンプで起こりうる不良発生個所を大別すると5つあります。

● 軸受
● 羽根
● シール部品 (グランドパッキン/メカニカルシール)
● カップリング
● ケーシング

どのような異常が発生しているのか?

 
それぞれの部品でどのような異常が発生しうるのか見ていきましょう。

軸受不良

 
特に軸受(ベアリング)は、不良が起こる可能性の高い部品で、18業種511事業所の実態調査結果をもとに1995年3月に潤滑油協会から発表された「潤滑管理効率化促進調査報告書」によると、破損割合の最も高い機械要素は転がり軸受で約3割を占めていたそうです。

malfunction_glaph

軸受不良で大切なことは、一にも二にも早期検知。稼働初期の段階では、故障率が高い傾向にあります(バスタブ曲線)。軸受の場合であれば、選定ミスや軸・ハウジングを含む周辺の設計不良、ミスアライメントなどによる初期不良が挙げられます。

設備のバスタブ曲線

使用時間が長くなってくると、内輪・外輪・転動体の微細な傷や摩耗にはじまり、はく離や焼き付きといった突発停止の要因となる劣化が発生します。これらは潤滑不良から引き起こされることも多々あるため、稼働中、潤滑不良が発生していないかを確認することが重要です。

汎用的な診断手法である振動法オイル分析、そのほかにもAE(アコースティック・エミッション)による診断などが挙げられます。
バスタブ曲線と軸受診断手法

羽根のアンバランス

 
可動部分の一つである羽根は、水圧を作り出すという非常に重要な役割を担っています。一般に6~8枚で構成され、開放型、半開放型、密閉型、プロペラ型などがあります。

羽根は軸が高速で回転してもゆるまないことが必要なので、軸にキーまたはねじ込みで固定されます。しかし、仮に内部の肉厚が少しでも異なった場合、重心のズレや部分的な摩耗などが生じ、回転中に振動します。この現象はアンバランスと呼ばれます。

シール部品の破損

 
シール部品はグランドパッキンを使用する方法と、回転面と固定面の接触によってシールを行う方法(メカニカルシール)があります。これらの部品には軸が回転している間、回転摺動部から液を漏らさないことが求められます。

メカニカルシールはグランドパッキンと比較すると寿命は一般的に長いといわれますが、一度漏れが発生したら分解点検が必要になります。

カップリングのミスアライメント

 
ポンプには軸を回転させるモーターが必要で、モーターとポンプの間はカップリング(軸継手)で結ばれます。カップリングで結ばれた2本の回転軸の中心線がまっすぐであれば、負荷がかからず、カップリングの寿命は長くなります。

逆に、2本の回転軸の中心線に「ずれ」が生じ、軸が水平でない状態のことをミスアライメント(芯ずれ)といいます。このように中心線がずれてしまうと、カップリングのみならず、軸受(ベアリング)に負荷がかかることもあります。芯ずれがないように調整することを「芯出し」といいます。

coupling_missalignment

上の図では、モーターの被駆動側(後脚)が駆動側(前脚)に比べて下がっており、ミスアライメントが発生しています。

ミスアライメントには、①両軸心に平行誤差が生じている平行偏心、②角度誤差がある状態の偏角、または③その両方が起こっている場合があります。その他にも、軸方向にずれが発生している軸方向変位があります。

ポンプとモーター間の芯出しは簡単・正確なレーザー式がおすすめです。レーザー式芯出しによるメリットは、難しい操作はなく短期間のトレーニングで正確な精度の芯出しが可能な点です。

レーザーを発信する2つのユニットをそれぞれ固定機械側と可動機械側に取り付け、9時方向・12時方向・3時方向の3か所で計測ボタンを押せば、調整値がディスプレイユニットに表示される仕組みになっています。調整を行っている間もリアルタイムで数値が更新されるため、何度も計測を行う必要もありません。

キャビテーション

 
キャビテーションは下記のような現象を指します。

キャビテーションは、羽根車などに発生する気泡(キャビティ)が崩壊するときに発生する繰り返し水撃作用によって、金属表面がえぐり取られる現象とされています。
腐食環境のもとでは、腐食生成物が次つぎに脱落するために、損傷の度合いはますます加速されます。

引用元:『ポンプの本』 日本プラントメンテナンス協会,2005,第9版

キャビテーションが発生した際の周波数をセンサで検知できれば、異常を早期に把握することができます。

おわりに

 
軸受の内輪・外輪・転動体・保持器にはそれぞれ固有の損傷周波数というものが存在します。それらを解析する手法がFFT解析と呼ばれるものです。FFTは軸受の異常に限らず、羽根のアンバランスやカップリングのミスアライメントといった低周波領域の異常や、歯車の摩耗・ポンプのキャビテーションなど高周波領域の異常も検知・診断することが可能です。

どの部位で損傷が発生しているのかを判断するために、振動計が使用されることも多いです。当社が取り扱っている振動計では最大819200のライン数で振動測定に対応しています。

bgMidashiIconWiSER 3Xセンサ 製品ページ

文/いしだ

参考文献:
『機械の診断・評価技術に関する調査報告書-転がり軸受の異常予知と材料評価-』,D&E 研究会,pp.1,10,1996
『一番最初に読む機械保全の本』 吉川達志著, 日刊工業新聞社
『ポンプの本』 日本プラントメンテナンス協会,2005,第9版


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