ブログ

回転機械のオンライン「監視」と「診断」の違い

online

プラント内にある、ポンプや遠心圧縮機といったさまざまな回転機械。設備の重要度が高ければ高いほど、定期的な状態診断や保全が欠かせません。しかし、定期的な計測・診断では不良の初期兆候を見逃してしまい、突発停止を引き起こしてしまう可能性は否定できません。

このような事態を防ぐために研究・開発が進められてきた分野が「オンラインによる状態監視・診断」。この言葉はよく耳にしますが、そもそも「監視」と「診断」の違いとは何なのでしょうか?今日はこれらの言葉の定義や、どのように設備の監視・診断を行っているのかを見ていきましょう。
 

「監視」と「診断」の違い

保全の用語として「モニタリング」という言葉をよく耳にします。英語のつづりはMonitoringで、これは監視と訳されます。一方、診断を英語にするとDiagnosticsとなります。この二つを端的にいうと下記になります。

「監視」はデータを連続して見ること
「診断」はデータを解釈し何かしらのアクションの指針とすること

私もよく混同してしまうこの二つの言葉。往復動圧縮機(レシプロコンプレッサー)の例がわかりやすかったのでご紹介します。

回転機械の中でも、診断技術の進展が遅れているものとして往復動圧縮機が挙げられます。石油精製では主に水素脱硫、石油化学ではLDPE分野の超高圧の昇圧やガスリサイクルなどに用いられている設備です。往復動圧縮機が停止すると、プラントの停止、すなわち生産性に直結するケースも少なくありません。そのため、保全対象設備の中でも比較的重要機器として位置づけられています。

近年、さまざまなメーカーからオンラインシステムが販売されており、それらのいずれでも往復動圧縮機の監視はできます。ただし、診断することは難しいとされてきました。なぜなら、現場での振動計測結果と実際の部品の損傷状況が合致しないという問題があったからです。

往復動圧縮機の診断システムを検証する前に、代表的な回転機械の状態監視・診断について見てみましょう。
 

ポンプや遠心圧縮機では振動計を用いた状態監視・診断が主流

振動による状態監視・診断の分野は過去数十年にわたり発展し、現在ではISOによる統一基準が存在するなど、一定の示唆を得ることができるレベルに達しています。その用途は実にさまざまで、日常点検といった簡易診断、異常発生時の振動測定・原因調査、メーカーであれば製品開発時、出荷時の検査など多岐にわたります。

ポータブルタイプの振動計にはじまり、高性能のオンラインシステムまで、各社開発・販売をしており、価格レンジも数十万円から数百、数千万円のものまで取り揃えています。振動計は転がり軸受の診断だけでなく、アンバランスやミスアライメントの検知も可能なため、ポンプだけでなく幅広い回転機械で採用されています。

振動センサは、一般的に5-20kHzの振動を測定しており、その周波数領域により、変位・速度・加速度に大別されます。変位は低周波領域で、アンバランスが発生しているか否かを診断できます。変位・速度に対応するためには、x-y-z方向の3か所にセンサを設置する必要がありますが、速度ではミスアライメントやボルトの緩みなどを、加速度では軸受(ベアリング)や歯車の欠陥を検知できるとされています。絶対判定基準(ISO 10816-1)による診断だけでなく、過去に蓄積されたデータを利用し、傾向管理による相対判定も可能です。

また、FFTモードを搭載したシステムであれば、どのような周波数の振動がどれくらいの大きさで発生しているかを可視化することができます。横軸に周波数を、縦軸に振幅をとったグラフを周波数スペクトルと呼び、さまざまな箇所に発生するピークをもとに、詳細解析を行います。モーター、軸受、ギアボックス、ファンといった回転部から発せられる周波数はそれぞれ異なるため、周波数スペクトルを解析することで、どの部位で不良が発生しているかを診断することができます。

センサを恒久設置し、オンラインシステムに接続すれば、データの収集・管理、トレンドグラフや3Dウォーターフォールの作成をPC上で実施できたり、異常発生時に警報・緊急停止信号をDCSや緊急停止装置に送出する(安全保護機能)ことができたりします。
 

往復動圧縮機の状態監視・診断に有効なシステムの特徴とは?

さきに述べた通り、往復動圧縮機の状態監視をするシステムは存在するものの、長い間、その診断技術は一定の水準でとどまっていました。現在は、さまざまな研究開発が進み、海外で一定の成果を上げているシステムもあります。例として、弊社で取り扱っている、PROGNOSTシステムの主なセンサ仕様・設置箇所を見てみましょう。


① クロスヘッド部に設置する振動加速度計。クランクシャフト・コネクティングロッド・クロスヘッド・ロッド・ピストンといった機器駆動部の状態監視のために使用される。
② ロッドパッキンケースフランジ部に設置する非接触変位計。ピストンロッドの機械的損傷、ピストンライダーリングの摩耗状態監視のために使用される。
③ シリンダ上の振動加速度計。シリンダ弁の異常監視のために使用される。
④ シリンダ上に取り付ける圧力計。シリンダのシール部品(ピストンリング・ロッドリング)やシリンダ弁の圧力損失等の監視のために使用される。
⑤ このほかに実回転数計測用の回転計が必要。

センサのほかに、これらのセンサから取得したアナログ信号をデジタル信号に変換し、信号解析を実施するユニット(PROGNOST-SILverおよびPROGNOST-NT)を設置する必要があります。

往復動圧縮機には特徴的な振動傾向があり、その変化を監視・解析する必要がありますが、従来の振動計では一回転の全振幅を単一実効値として計算していたため、振動ピーク部の微細な変化をとらえることができず、結果として早期の異常検知が難しくなっていました。

PROGNOSTシステムでは、取得した1回転中のオンライン信号をクロスヘッド部であれば36のセグメントに、ピストンロッド部であれば8のセグメントに分割することで、部品のガタによって発生する振動のセグメントの毎回転の変化を監視します。得られたデータを複合的に組み合わせ、システム内に蓄積された損傷パターンデータベースとの比較を行うことで、シリンダ弁やライダーリングの損傷レベルを自動診断することができます。
 

さいごに

今回、この記事を書くために、いくつか振動計やオンラインシステムのカタログを拝見しました。データ収集の高速化、高度なデータ解析や多様なグラフ出力といった機能面だけでなく、使いやすいシステム設計といった操作性も進化しているようです。

状態監視だけでなく、正確かつ早期に異常を検知できるシステムの探求はこれからも続きそうですね。

文/石田有紀
 


ページ上部へ戻る