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軸受のオンライン状態監視、対象機器や診断手法はどう決める?

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以前、「設備保全」に焦点をあて、オンライン監視とオフライン監視の違い、それぞれのメリットについてのコラムを掲載しました。

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今回は、「軸受のオンライン状態監視」に焦点を当て、対象の機器の選定の仕方や測定によって得られるアウトプットについて見ていきましょう。

オンライン状態監視とオフライン状態監視の違い

 
まずは両者の違いをもう一度おさらいしてみます。オンライン状態監視とは、恒久設置したセンサから常時信号を取得、信号伝送器などを介し、リアルタイムで計測値をアウトプットする方式ですね。特に非常に重要な設備や、劣化速度の速い設備で用いられることが多い監視方式です。

常時監視方式
(前略)プラント各部に配置されたセンサから主効果の信号や重要な機器に取り付けた2次効果の振動信号などを現場から中操などに送り、オンラインで常時監視する方式である。(中略)回転機械のように変化がプラント異常に直結するような機器には、このオンライン監視が必須である。(中略)この方式はコストがかかるので、監視すべきセンサ信号は厳選されねばならない。
引用元:『機械設備の状態監視と診断【第3版】』 振動技術研究会

対して、オフラインは大きく二つの方式に分けられます。
①ポータブル型の診断器でヒトが都度、計測・結果の記入を行う
②センサとケーブルを恒久設置し、計測の際、安全域にある端子ボックスに診断器を接続することで診断する

ポータブルタイプの診断器はその手軽さがメリットですが、操作器の記録媒体仕様によっては、診断結果をメモし、ExcelなどのCSVファイルに記入しなければトレンド管理がしづらいといったデメリットが存在します。そのため、生産には影響を及ぼさない重要ではない機器で用いられることが多いやり方です。

②は、セミオンラインと表現されることがある方法で、人が近づけない機器だけでなく、高所や狭所で人が計測するのが難しい個所にも向いています。

軸受のオンライン状態監視

 
では、軸受をオンラインで常時監視したい場合は、どのようなポイントに注意すればよいのでしょうか。順を追ってみていきましょう。

対象機器

 
上記で述べたとおり、オンラインの場合は、常設用センサやケーブルなどオフラインに比べてコストがかさみます。そのため、突発停止してしまうと生産ロスに直結する可能性のある設備や、定期計測では不良を見逃す可能性のある劣化速度の速い設備から取り入れる企業が多いようです。故障の発生頻度やその復旧にかかる費用も考慮に入れることが重要です。

診断手法

 
①振動法
汎用的な軸受診断手法としては、振動法が挙げられます。転がり軸受の診断だけでなく、アンバランスやミスアライメントの検知も可能なため、幅広い回転機械で採用されています。変位・速度に対応するためには、x-y-z方向の3か所にセンサを設置する必要があります。

②AE(アコースティック・エミッション)
AE(アコースティック・エミッション)という、転がり軸受の初期不良検知に向いている手法もあります。AEとは、固体が変形・破壊する際に、個体がそれまで蓄えていた”ひずみエネルギー”を開放する結果として発生する弾性波で、これを電圧信号として捉えるのがAEセンサです。AEは、金属であれば放射状に伝播するため、方向成分の制限を受けません。そのため、軸受に金属的に接触しているケーシングやボルトなど、設置しやすい個所に1つ取り付ければ計測可能です。

得られるアウトプット

 
振動センサによる常時監視の場合
振動センサは、一般的に5-20kHzの振動を測定しており、その周波数領域により、変位・速度・加速度に大別されます。変位は低周波領域で、アンバランスが発生しているか否かを診断できます。速度ではミスアライメントやボルトの緩みなどを、加速度では軸受(ベアリング)や歯車の欠陥を検知できるとされています。絶対判定基準(ISO 10816-1)による診断だけでなく、過去に蓄積されたデータを利用し、傾向管理による相対判定も可能です。

また、FFTモードを搭載したシステムであれば、どのような周波数の振動がどれくらいの大きさで発生しているかを可視化することができます。横軸に周波数を、縦軸に振幅をとったグラフを周波数スペクトルと呼び、さまざまな箇所に発生するピークをもとに、詳細解析を行います。モーター、軸受、ギアボックス、ファンといった回転部から発せられる周波数はそれぞれ異なるため、周波数スペクトルを解析することで、どの部位で不良が発生しているかを診断することができます。

振動による設備診断は、周波数の基礎知識や経験が必要ですが、さまざまな回転機械に適用できる点がメリットといえます。

おわりに

 
振動、AEいずれのオンライン状態監視でも、強み・弱みは存在します。自社のリソース(ヒト・モノ・カネ・情報)に照らし合わせて、最も適した手法・システムを導入することが重要です。

ここでは軸受のオンラインシステムをご紹介しましたが、往復動圧縮機(レシプロコンプレッサー)などの回転機器用オンラインシステムや、ギアボックス用のシステムも取り扱っております。ご興味のある方はお気軽にお問い合わせください。

文/いしだ

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