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石油精製・化学業界で必須の往復動圧縮機。その構造とは?

reciprocating compressor

石油精製・化学プラントにはなくてはならない「圧縮機」。なかでも、私がこの業界に足を踏み入れてから最初に勉強したのが「往復動圧縮機」でした。
往復動圧縮機とはどのような構造で、どのような役割を果たしているのでしょうか。今日はその概要を解説します。

 

圧縮機とは?

まずは圧縮機の定義から見ていきましょう。

圧縮機(あっしゅくき)とは羽根車若しくはロータの回転運動又はピストンの往復運動によって気体を圧送する機械のことである。コンプレッサーともいう。

引用元:Wikipedia

圧縮機の主な機能・役割は「気体を圧送する」ことのようです。気体の圧力を上げた後、そのガスを使用するところまで搬送するんですね。
そもそも、気体の圧力を上げるとは、どのようなことでしょうか。

身近な例で気圧について考えてみましょう。私たちが普段暮らしている世界は1気圧と定義されています。でも、高い山の頂上や飛行機の機内など、1気圧よりも気圧が低いところが存在します。例えば、機内であけたペットボトル。そのふたをしっかりと閉めた場合、その中に気圧の低い空気が閉じ込められます。

飛行機が高度を下げ、地上に近づくと外の気圧は徐々に高くなっていきます。それに合わせて機内の気圧が上がっていくので、ペットボトルが圧されてつぶれます(機内の圧力>ペットボトルの圧力)。

反対に大気を1気圧よりも高くしたい場合に用いるのが、圧縮機です。圧縮機の種類は大きく「容積形」と「遠心形」に分けられ、容積形は「スクリュー」と「レシプロ(往復動)」が挙げられます。今回取り上げた「往復動圧縮機(レシプロコンプレッサー)」は、ピストンの往復運動を利用した圧縮機で、高圧を得るために多段圧縮を行う場合などによく利用されます。
reciprocating compressor
 

往復動圧縮機の構造

圧縮するガスの種類や用途によって、圧縮機の構造も変わります。例えば、水素を圧縮する場合、酸素と反応すると爆発を起こすため、外にガスを漏らさないよう設計されます。計装用の空気圧縮機の場合は、V型のものが汎用的に使用されています。圧縮機を分類すると、大きく以下の4つに分けられます。

① 竪型
② 横型
③ V型
④ 水平対向型

今回は上図のような水平対向型の構造を見ていきましょう。

名称 機能
①クランクシャフト 駆動機の回転を伝達する
②コネクティングロッド クランクシャフトの回転運動をクロスヘッドの往復運動に変換する
③クロスヘッド 変換された往復運動を担う
④シリンダ ガスを昇圧する容器
⑤ピストンロッド ピストンとクロスヘッドを接続する
⑥ピストン シリンダ内のガスを圧縮/膨張させる
⑦ピストンリング トップ(もしくはボトム)側で圧縮したガスの漏れを防ぐ(シールする)
⑧ライダーリング ピストンの重量を支える
⑨吸入弁 ガスをシリンダ内に吸引する
⑩吐出弁 圧縮されたガスをシリンダ外へ排出する
⑪ロッドパッキン ピストンロッドに沿って漏れ出るガスを封じる(シールする)
⑫オイルワイパーリング ピストンロッドに沿って漏れ出るクランクケース内潤滑油をかき取る

 

圧縮の行程

ガスは吸入弁から入り、シリンダ内でピストンの往復運動(下図の場合はピストンがボトム側からトップ側に動く)によって昇圧された後、吐出弁から排出され配管へと向かいます。

cylinder

圧縮されたガスは100℃以上の高温に達するので、多段圧縮の場合は各段の間に冷却器が設けてあり、そこで一旦冷却してから、次のシリンダでさらに昇圧されます。この工程を複数繰り返すことで、高圧のガスをつくることができます。

例えば石油精製では脱硫用として水素を圧縮しますし、石油化学ではポリエチレン製造のため、エチレンガスを圧縮します。
 

さいごに

いずれも、実は私たちの生活に密接にかかわっており、圧縮機がなければ現代の生活は成り立たないとまでいわれます。
普段触れることのない世界ですが、私たちの生活はさまざまな機械やヒトたちによって守られているんですね。

文/いしだ


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