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風車芯出しの課題とは?レーザーアライメントなら時間短縮も同時に実現

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日本で風力発電の本格的な導入が始まってから10年余。2014年時点で、国内の風力発電は460箇所、約2千基(発電能力計約250万キロワット)におよびます。今後も注目を集める発電事業といえるでしょう。

一方で、風力発電所が増えるにつれ、事故の発生件数も増加の傾向にあります。2013年3月には、京都の太鼓山風力発電所で大規模なブレード・ナセルの落下事故が発生しました。その他にも、同年には部品の落下事故が5件、2014年度は6件起きたとの報告があげられています。
このような重大事故を引き起こす可能性のある現象の一つ、それが「カップリングのミスアライメント」なのです。その対策として、従来のメンテナンス手法の見直しが進められています。

そこで今日はカップリングの芯出しに焦点をあて、「風車ならではの芯出しの課題」と「レーザー式芯出しユニットのメリット」を取り上げます。
 

風車のルーツ

風車で真っ先に思い浮かぶのは、オランダの風車ではないでしょうか。キンデルダイクの風車群はユネスコの世界遺産にも登録されていますね。オランダという国は北海に面しており、定常的に風が吹く環境にあったため、古くから風車が利用されてきました。
では、そもそも何のために風車がつくられ、利用されるようになったのでしょう?

風車の歴史は古く紀元前から利用されているといいます。英語で「Windmill」といい、もともと小麦などの穀類を粉に挽くために利用されていました。しかし、その用途は広がりをみせ、14世紀以降は干拓のために水を汲み出す装置として使用されるようになりました。特にオランダの干拓地は海面より低いため持続的に排水をしなければなら
ず、そのための動力として風車が用いられたとされています。古くから風車と上手につきあってきたからこそ、世界中の人たちに親しまれる存在になったのでしょう。
 

風車の構造

現代の風車は時代や用途にあわせ、その構造を大きく変化させてきました。風力発電は、ブレード(回転羽根)が風を受けて回転する力を利用するため、風車の上部には増速機発電機などが設置されたナセルと呼ばれる個所があります。ナセルは地上数十メートルのところに設置されており、ブレードの直径は大きいもので120メートルにおよびます。
これらを支えるのがタワーで、地上や洋上など、一定の地理条件を満たした場所に基礎工事を行い設置します。

ナセルの内部には、ブレードの付け根をローター軸に連結するハブ、ハブからローター軸を通じて連結された増速機や発電機、ブレーキなどの運転・制御系の装置、インバーターや変圧器などが格納されています。
 

風車の芯出しはなぜ大変?

ナセルには主軸の回転を発電に必要な回転数に増幅させる増速機と発電機との間をつなぐカップリングが設置されています。ナセルの構造や風況によってミスアライメントが発生しうるので、可能な限り、それを吸収できる信頼性の高いカップリングが求められます。風車では、下図のようなブレーキディスクがついたカップリングが使用されています。
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一部の風車で用いられているカップリングスペーサーは鉄製で重く、現場での取り外し作業が困難です。そのため、カップリングを分解せず、芯出しをすることが求められます。また、カップリングの偏心・偏角公差がシビアなため、精密かつ定期的な芯出しが必要です。

ある風力発電事業所では、ダイヤルゲージによる芯出しでは1基あたり2日を要していたそうです。仮に30基を所有する事業所がサイト内の全風車の芯出しを年1回チェックするとなると、30基×2日=60日、50基ならば50基×2日=100日と、1年の大半を芯出し作業に費やさなければならなくなります。
 

レーザー式芯出しユニットの利点とは?

欧州で汎用的に使用されているレーザー式は、軸(シャフト)を半回転程度回すだけで、現状の偏芯・偏角、そして調整シムの厚みまで瞬時に表示可能です。分解能は0.001mm、レーザーの直進性を活かした芯出しユニットで、ダレなどによる計測誤差も回避できます。ディスプレイユニットをPCに接続し、データを出力できるタイプもあり、芯出し測定結果の見える化が実現できます。

レーザー式芯出しユニットの主な特徴

○難しい操作はなく、短期間のトレーニングで正確な精度の芯出しが可能(分解能0.001 mm)
○カップリング間距離20mまで芯出し可能
○冷却塔などの長尺カップリングや中間軸のあるカップリングの芯出しにも適用可能
○ディスプレイユニットで芯出し記録をその場で確認
○Bluetooth搭載でワイヤレスを実現
○機械設置時の、どの段階でも芯出し可能
○40度以上の回転で芯出し可能
○ソフトフット(脚のガタ)測定可能
○熱膨張補正機能

レーザー式芯出しユニット導入における課題と対策

カップリングを分解せず、レーザー式ユニットで芯出しを行う場合、増速機側シャフトと発電機側シャフトそれぞれにレーザーユニットを取り付ける必要があります。
しかし、増速機側シャフト用のレーザーユニットは、ブレーキディスクに阻まれてしまうため、通常のチェーンによる固定ができません。仮にブレーキディスク端面に設置する場合には十分な精度での固定と、ブレーキパッドやカバーと緩衝しないことが条件となります。
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弊社では緩衝物を回避しながら確実に固定ができるブラケットの設計・製作を行っています。これらのブラケットはマグネット式になっており、簡単に着脱可能です。
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計測時の様子

ブラケットとレーザー式芯出しユニットをあわせて導入いただき、実機での芯出しを実施いただいたところ、取り付けから計測、芯出し完了まで約1時間程度と、大幅な時間短縮が可能になりました。
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さいごに

風力発電について新聞にこんな記事が出ていました。

日本では現在陸上風力が主流だが、洋上風力も20年度までに運転開始予定の案件が合計16万キロワットあるとされている。
引用元:日本経済新聞/2015年9月2日

これからさらに日本のエネルギー産業の一角を担う存在になっていきそうですね。

文/いしだ


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