ブログ

低速~高速回転機器の設備診断、最新の動向とは?

bearing maintenance

先月、メンテナンスや設備診断にご興味がある方が多く来場されるメンテナンス・レジリエンス TOKYO 2016に出展しました。私は昨年と同様、主に軸受診断ツールのご紹介をしていたのですが、「これから始めようと思っている」「すでに振動計を使用して軸受診断をしている」という方が今年も多くいらっしゃいました。

なかには「振動計などのツールを使用して軸受診断に力を入れているにも関わらず、突発停止が起こってしまった」という方もいらっしゃいました。そのため、新しい診断技術を探しているというお声もちらほら。

そこで、本日は回転機器診断の動向と、AE(アコースティック・エミッション)技術を用いたベアリング診断器の特徴について記事にしていこうと思います。
 

さまざまな業界へ広がりをみせる設備診断

石油精製・化学などのプラントでは、古くから設備診断の重要性が認識され、ポンプや遠心圧縮機といった設備は振動解析やオイル分析による状態監視が行われてきました。定期的な計測・診断を行うことで、部品の損傷レベルについて一定の示唆が得られるようになったため、一部のプラントでは各部品のCBM化(状態ベースメンテナンス)を実現しています。

特に振動解析技術は、計測器の小型化・高精度化が進み、より多くの産業で運用が広まってきています。

一般的に、長大な設備を要す重工業においては、専門の部署を設け、さまざまなツールを併用しながら診断を行っています。一方で、近年ツールの運用検討が多くなっている食品や機械メーカーなどの産業では、現場の機器保全者やオペレーターが日々の業務の合間をぬって計測を実施していることも少なくありません。

突発停止が起こらないように頻繁に計測を行っていたら業務過多となってしまいますし、そもそも設備診断業務が定型化されていない場合も多く、ツールの導入が進まないケースもあるようです。

ツールを導入している企業の方からもお話を伺ったのですが、「計測機器を使った保全をするよう社長命令が下った」という担当者の方や、「FFT表示機能がある振動計でとりあえずデータだけ取って、通常と異なる波形が出ていないかどうかだけ見ている」という方など、計測機器を使っている=診断を実施し、CBM化できているという企業はまだ多くない印象を受けました。

このような状況を打開するために弊社がご提案しているのが、AE(アコースティック・エミッション)技術を用いた簡易診断手法です。
 

AE(アコースティック・エミッション)とは?

AEは一般的に以下のように定義されています。
AEとは、Acoustic Emission(アコースティック・エミッション)の略で、一般的には下記のように定義されています。

アコースティック・エミッション(Acoustic Emission, AE)とは、材料が変形あるいは破壊する際に、内部に蓄えていた弾性エネルギーを音波(弾性波、AE波)として放出する現象である。

引用元:Wikipedia

このような特徴を持つAE技術を動機器の診断に適用する動きは1990年代から始まったとされています。

ae_history

AE法は、振動解析では対応が難しいとされる低速回転機器の診断にその優位性があるとされてきました。転がり軸受でいえば、摺動面の傷や潤滑不良個所で発生する金属接触(外輪/内輪レースと転動体の接触)によって、傷個所を起点に発生する微小なレベルのひずみが発生するため、これにより突発的な弾性波が生まれます。この弾性波は、たとえ低速の機器であっても、金属接触が起こった際に発生します。そのため、低速の設備が多い製紙業界などでは振動計の代わりとして利用する企業が増えました。

このような時代の潮流に乗り、弊社が2000年から取り扱いを始めたAEセンサ搭載ベアリング診断器 MHCも、製紙だけでなく、重要な低速機器を多く抱える化学プラントなどを中心に導入いただきました。
 

MHCの特徴

先述した「早期の不良検知」という特徴も優位性の一つですが、MHCが簡易診断を行う上で優れている点がほかにもあります。それは「広範な」機械に1台で対応できること、誰でも「簡単に」軸受診断ができることです。

  • 超低速機を含む「広範な」回転機器に対応
  • 初期段階での微細なトラブルも「早期に」発見
  • 管理値の事前計算が必要なく「簡単に」診断判定が可能

MHCは、「スタンダードモード」と「スーパースローモード」の2つの診断モードを採用しており、モーター、ポンプ、ファン、ギアボックスなど、低速から高速まで1台で診断ができます。

また、診断時には独自のパラメータ「ディストレス®」と「dB(デシベル)」、2つの数値を表示。「ディストレス®」は、初期不良の有無の判定値として、多くの機器に適用可能です。

これらの特徴を活かし、ある大手化学会社では、300台近くある回転機器に対し、「MHCで欠陥発生が疑われる機器を早期に特定→振動計を用い詳細解析を行う」という2段階の診断を実施する方式に変え、機器管理率を従来の10%から95%にまで大幅に改善されました
 

回転数にとらわれない診断パラメータ「ディストレス®」

ここで、なぜ低速~高速まで、「広範な」機器に対して、統一の判断パラメータ「ディストレス®」を使用できるのかについても、簡単にふれたいと思います。MHCは潤滑不良などの金属接触により発生した弾性波を圧電素子型のセンサで捕捉し、信号処理します。MHCでは下図のようなAEエンベロープ波形をもとに、軸受傷が発生した際に見られる「突発型AE信号」を数値化する技術を搭載しています。

正常な軸受のAE信号 傷があった軸受のAE信号
正常な軸受のAE信号 傷があった軸受のAE信号

AEエンベロープ波形はその強度に差はあるものの、回転数に関わらず軸受に初期傷が出れば突発型AE信号は必ず発生します。また、回転速度の変動とともに、サンプリング時間中の全信号平均値は変動しますので、これを適切に演算処理する機能を搭載し、どのような回転数の軸受においても、共通の判断指標である「ディストレス®」を出力するようプログラムされているのです。
 

さいごに

今回の内容は株式会社新樹社が発行している『月刊トライボロジー 7月号』に掲載されました技術論文「AE法を用いた回転機器診断の動向」を編集・執筆したものです。本誌では2ページにわたり、突発型信号のパラメータ化などを解説しておりますので、ご興味のある方はぜひご購読ください。

資料ダウンロード

文/石田有紀
 

 

関連eBook

banner_ebook_brg

banner_ebook_brg


ページ上部へ戻る