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渦電流の原理を解説!「変位測定」のほかに「軸受診断」に適用できることをご存知ですか?

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振動センサは主に接触型と非接触型に分類でき、蒸気タービンや遠心圧縮機といった回転機械のロータのふれまわり振動の測定には非接触型センサが用いられます。非接触型の中でも、渦電流センサはその代表格として知られています。

本日は渦電流センサの仕組みとその適用範囲についてみていきましょう。

渦電流センサの仕組み

 
渦電流センサは主にセンサ部とドライバ(変換器)で構成され、発振回路・共振回路・検波回路などの電子回路が入っています。この発振回路からセンサコイルに高周波(数MHz)信号が供給されるとセンサコイルから高周波の磁束が発生します。

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測定対象物(金属)にこの磁束が接触すると、金属表面に渦電流が発生します。この渦電流の大きさはセンサコイルと金属の距離と相関関係があり、距離が近いと渦電流は大きく、距離が遠いと小さくなります。この時、測定対象物とセンサの距離が近づくにつれ、発振振幅が小さく、距離が大きくなるにつれ、振幅が大きくなるという特徴を利用し、この発振振幅を整流して直流の電圧の変化をみます。

例えば、ロータの振動測定では、センサをロータから1mm程度離し、治具でケーシング(軸受台)等に固定します。その後、ロータとセンサ間の距離=振動変位を測定します。

渦電流センサの出力はセンサと測定対象物(金属)の距離に比例するので、対象物が静止していても出力、すなわちDC成分を得ることができます。整流された信号と距離はほぼ比例関係ですが、リニアライズ回路で直進性の補正をすることで、距離に比例した出力を得ることができます。

渦電流センサの特徴

 
渦電流センサには長所が多くある一方で、測定対象物は金属のみといった短所もあります。特徴をしっかりと把握したうえで、利用することが重要です。

長所 短所
○構造が簡単
○小型・軽量
○感度が十分
○測定周波数範囲が広い
○非接触で測定するため、振動体に影響しない
○測定対象物が金属のみ
(金属の材質で感度が変わる)
○測定中の温度変化に注意
○ランナウトの誤信号に注意
○センサ同士が近いとノイズが発生

渦電流式変位センサは、シンプルな構造で信頼性が高く、使用温度範囲も広い(通常-30~150℃)ため、さまざまな環境で使用できます。また、セラミックを利用した場合、800℃まで適用可能なものもあります。

渦電流の原理を「軸受診断」に適用すると…?

 
先にご紹介してきた渦電流センサは測定対象物との変位を見るためのものでしたが、この原理を転がり軸受の診断に適用した製品があります。それが株式会社IIUが開発したEMセンサ・RISです。

EMとはElectromagnetic sensor(エレクトロ・マグネティック)の略で、電磁誘導、すなわち磁石の力と発生する電流を軸受診断に応用した非破壊検査の一種です。

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センサの内部には磁石が入っており、その周辺にはコイルが巻かれています。センサから出たケーブルはデータロガーに接続されます。

磁石は常に磁束が発生しており、これを B(磁束密度)とします。シャフト(軸)が回り始めると同時に、中の転動体(玉、コロ)が回転し始めます。これを U(回転速度)とします。転動体は金属から構成され、無数の自由電子を含んだ物質(導体)です。

すると、BとUの影響で、導体通過時にP(渦電流)が発生します。Pは、導体に近づくと強く、離れると弱まります。渦電流の変化により、コイルに電気が流れます(渦電流強=電圧大/渦電流弱=電圧小)。

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このように、軸受の動きを電圧信号の変化から読み取ることができるのです。

おわりに

 
低速で回転している軸受では回転による遠心力が小さいことから、微小傷や摩擦によって生まれるガタつきではフレームを揺らす振動にならず、振動加速度センサでは十分な電圧信号が取得できないことがあります。

一方、EMセンサで計測した場合、磁場の揺らぎは軸受の回転速度に関わらず発生します。また、信号測定時間を自由に設定できるため、低速回転機械でもFFT解析が可能です。卓越した周波数があった場合、損傷周波数と合致するかを確認することで、軸受に損傷があるか否か、その部位を確認することができます。

計測対象機器にあわせて最適な診断手法・センサを使用し、機器のスクリーニング→精密診断といった流れを確立しようという動きも広がってきています。

自社の機器にはどのような診断がいいのかわからない、という方はぜひ一度ご相談ください。

文/いしだ

参考文献:
『ISO基準に基づく機会設備の状態監視と診断(振動カテゴリーⅡ)【第3版】』,振動技術研究会


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