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ケーススタディ:ピストン亀裂の早期検知による重大トラブルと生産ロスの回避

piston failure

先月は大阪と東京の2か所で、主に石油精製・化学のお客様を対象に、『回転機器の状態監視セミナー』を実施しました。当日はドイツのPROGNOST(プログノスト)システムズ社から提供いただいた資料をもとに、PROGNOST®システムを利用いただいている世界各国のユーザーから寄せられた事例を交えて講演をさせていただきました。

今回はセミナーでご紹介したケーススタディを解説していきたいと思います。
センサの設置位置や、実際に解析の際に用いたデータ一式をご覧になりたい方は、ダウンロードページから資料請求くださいね。

資料ダウンロード

 

センサ設置機器の概要

ユーザーはカナダにある石油精製企業(以降、A社)で、対象となった設備はインガーソルランド製 3列水平対向型、メイクアップ水素の圧縮機でした。回転計、振動加速度センサ(フレーム部・クロスヘッド部・シリンダ部)やロッドドロップセンサ(近接センサ)等を複数取り付けていました。

ちなみに、PROGNOSTシステムズ社では、振動加速度センサの設置位置として、クロスヘッド部を推奨しています。さまざまな経験から、駆動部の異常検知に有効であるとしています

A社では、ベンダーの意向を汲み、フレーム部とシリンダ部にも振動加速度センサを設置し、常時監視を行っていました。
 

経緯

A社がPROGNOST®システム一式を導入したのは2015年。その後、1年間は特に問題なかったのですが、2016年7月28日にロッド変位のピーク-ピークの明らかな上昇と、クロスヘッド部の振動上昇が確認されました。いずれの値もアラーム値には達していませんでした。

解析担当者からの報告を受け、当該機を停止し、検査を実施したところ、クランク油色が黒ずんでおり、粒子や水分コンタミが確認されました。ただ、錫(バビット)分は検出されなかったので、機器の再起動を実施しました。

それから約1週間後の8月5日、ロッド変位のピーク-ピークが27.5mils(700μm)を記録したため、補修のための準備を開始。その際、ロッド変位のピーク-ピーク20回転連続超過した場合、機器をトリップするよう設定を行いました。

さらにその4日後の8月9日、PROGNOST®システムがロッド変位のピーク-ピークの異常により機器トリップを実施しました。
 

PROGNOST®システムを用いた解析

PROGNOST®システムでは、取得した信号を処理し、振幅の大きさをクランク角ごとに時系列でビジュアル化する「3Dウォーターフォール」という機能があります。

当該機で実際に解析で使用したウォーターフォールプロットでは、図①:ロッド変位解析、図②:クロスヘッド部の振動解析、図③:シリンダ部の振動解析の結果を確認できます。

3Dウォーターフォールの見方ですが、X軸(左から右へ)が時間軸、Y軸(奥から手前)がクランク角 0°~360°、Z軸(縦方向)が振幅を表しています。

3Dウォーターフォール
3Dウォーターフォール
図①:ロッド変位 図②:クロスヘッド振動
3Dウォーターフォール
図③:シリンダ振動

図①:上死点と下死点(X軸)で瞬間的に変位が増加しているのがわかります。
図②:上死点と下死点に若干の衝撃が認められるものの、アラーム値には達していません。
図③:上死点と下死点での振動は一定(バルブの挙動に合致する振動のみ)で、特に変化は見られませんでした。

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開放結果

ピストンロッドを取り外し、分解したところ、ピストンに亀裂が発生していました(写真A・B)。

ピストン破損写真
ピストン破損写真
写真A 写真B

 

本事例のまとめ

■ 重大なトラブルを引き起こさず、機器を停止することができた
■ 部品、作業員費、機器停止に伴う生産ロスを回避することができた
■ 早期不良検知のために、ロッド変位のピーク-ピークの境界値を前回設定値を下回る22.5mils以下に設定することを検討
 

さいごに

約5、6年前にも、石油精製・化学のお客様を中心にお招きし、PROGNOSTシステムズ社と共同でお話をさせていただいたのですが、当時はまだこういったシステムの検討や導入に積極的な企業様の数は少なかったそうです。

ここ数年の間にIoTという言葉が専門誌のみならず、経済誌の表紙にも踊るようになり、皆さまのシステムに対する興味関心度もだいぶ変わってきた印象を受けています。

雇用形態が流動的だった欧米・欧州諸国では、アナログ対応からデジタルへ早い時期から転換が進んできました(日本の現場サイドからのボトムアップ型と、各国でよくみられるトップダウンの意思決定型という違いもありますが)。

一方、日本では長い間、「ものづくり大国」だけではなく「設備保全技術者大国」で、ベテランの方々がしっかりと機械やプラントの安全を守ってきてくれました。しかし、ここにきて、団塊世代の退職、就職氷河期世代の人員不足、ひいては少子高齢化の到来と、その技術の継承が大きな課題となっている企業も少なくないようです。

重要設備においても、50年選手、60年選手も出てきているからか、お引き合いを頂戴するなど、前回と比べて皆さんがシステム導入を前向きに検討されていることが伝わってきました。

お越しいただいた参加者の皆さま、ありがとうございました。

文/石田有紀
 
 

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